賃上げ進展の一方で燃料高、海外不安が日本経済に重荷

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春闘では大手企業を中心に高水準の賃上げ回答が続き、家計の購買力回復への期待が広がっている。一方で、ガソリン価格は全国平均で過去最高を更新し、中東情勢の緊張や米FRBの慎重姿勢も重なって、物価と景気の先行きにはなお不透明感が残る。賃上げの流れを中小企業や非正規雇用に広げられるかが、日本経済の持続力を左右する焦点となっている。

日本経済は足元で、賃上げの前進と資源高による負担増が同時に進む局面にある。ことしの春闘では大手企業で高い水準の回答が相次ぎ、賃金改善への期待が高まったが、家計がその恩恵を実感するには、物価上昇を上回るかたちで幅広い層に波及することが欠かせない。とりわけ、エネルギー価格の上昇が続くなかでは、名目賃金の伸びだけでは消費の下支えとして十分でない可能性もある。

賃上げの動きは、日本経済にとって前向きな材料だ。大企業の回答が高水準となったことで、人手不足が強い企業を中心に待遇改善の流れが定着する期待がある。ただ、今後の焦点は中小企業が同様の賃上げに踏み切れるかどうかであり、価格転嫁力の弱い企業では収益面の制約が重い。非正規で働く人への波及も含め、賃上げの裾野が広がらなければ、個人消費の持ち直しは限定的になりやすい。

一方、家計を直撃しているのがガソリン価格の上昇だ。全国平均のレギュラーガソリン価格は過去最高となり、44都道府県で最高値を更新した。背景には中東情勢を受けた原油高があり、原油先物も大きく上昇している。燃料費の上昇は物流コストや電力料金などを通じて幅広い物価に波及しやすく、せっかくの賃上げ効果を相殺する懸念がある。

海外では、米連邦準備制度理事会(FRB)が2会合連続で政策金利を据え置き、中東情勢を含む不確実性への警戒を示した。市場では米国の利下げ開始時期を見極める姿勢が続きそうで、為替や資本市場を通じて日本にも影響が及ぶ可能性がある。また、米情報機関が中国による台湾侵攻を2027年までに計画していないとの分析を示したことは、東アジアの緊張をめぐる見方に一定の材料を与えたが、地域の安全保障リスクが後退したとまでは言い切れない。パキスタンとアフガニスタンの一時休戦も伝わったが、地政学リスク全体の沈静化を示す段階ではなさそうだ。

日本にとって当面のポイントは、賃上げによる内需の支えと、エネルギー高による実質所得の圧迫のどちらが強く出るかだ。企業収益が底堅く、中小企業や非正規雇用にも賃上げが広がれば、景気の下支えにつながる余地はある。ただ、原油高や海外情勢の不透明感が長引けば、家計の節約志向が強まり、景気回復の足取りを鈍らせる可能性もある。

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