15日のニューヨーク原油市場でWTI先物価格が一時1バレル=100ドルの大台を再び突破しました。米国がイランの主要な原油積み出し拠点を攻撃するなど、中東地域の緊迫した情勢が供給懸念を生み出しており、エネルギー価格の上昇圧力が世界経済に波紋を広げています。
こうした状況を受けて、IEAは加盟国の合意に基づき、総額4億バレルの石油備蓄放出を発表しました。地域別の対応では、アジア・オセアニア地域は直ちに放出を開始するとしており、需給調整を通じて市場の安定化を図る構えです。日本政府も独自に、民間企業に保有義務がある石油備蓄を16日から放出する方針を決めました。今週中に日本向けタンカーが大幅に減少する可能性があるため、あらかじめ供給を確保しておく戦略的な判断といえます。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は日本を訪問した際、現在の中東情勢について「エネルギー価格が上昇圧力にさらされ、世界経済の回復力が再び試されている」と指摘しました。事態が長期化すれば、インフレ圧力の高まりを通じて各国の金融政策運営に新たな制約が生じる可能性があります。米国の1月個人消費が堅調な一方で、PCE価格指数が前年比2.8%上昇するなど、既にインフレの粘着性が目立ち始めており、エネルギー価格の変動はこのバランスを大きく揺さぶる要因となります。
一連の備蓄放出の動きは、供給不安を緩和するための各国の協調姿勢を示すものです。ただ、ホルムズ海峡への機雷敷設報告など供給リスク要因が完全に払拭されたわけではなく、市場はなお不確実性の高い状況が続くと認識しているものとみられます。日本経済への影響を最小限に抑えるためには、国際的な対応枠組みの継続と、不測の事態への対応準備が引き続き重要となるでしょう。